私がもっとも好きな歴代の僧侶のうちの一人で、「良寛:りょうかん」という禅僧がおります。
江戸時代の末期の和尚様で、とても心のやさしいかたで、いつも村の子供たちと毬つきをして遊んでいたそうです。
子供たちも良寛和尚が大好きで、良寛和尚が山の庵から村に托鉢に降りてくると、子供たちは楽しそうに、そのあとを追って行っては、良寛和尚に「何かお話聞かせて。」とせがむのでした。
そんなとき、きまって良寛和尚は、このお話をされたそうです。
ー月のうさぎー
「むかしむかし、ある森に、とても仲が良い3びきの動物がいました。
力が強いクマ君と頭のいいキツネさん、そして、とても優しいうさぎちゃん。
3びきはいつも行動をともにしては協力し合って楽しく過ごしていました。
その3びきには一つの決まりごとがありました。
それは、困っている人がいたら必ず力を合わせてその人を助けようというものでした。
この決まりごとは3びきの友情の証でもあり、どんなことがあっても絶対に守ると堅く約束していたのです。
そんな3びきの動物を、天の神様が見ていました。
そして、3びきの「約束」が本当かどうか試してみたくなり、地上に降りてきたのです。
ある日のことです。3びきが住む森に、一人のヨボヨボのとてもやつれた老人がやってきました。
どうやら、長旅のせいでとてもお腹がすいているようです。
今にも倒れそうな老人の所に3びきがやってきました。
3びきは「約束」通りその老人のお腹を満たしてあげようと、それぞれの能力で獲物をとりに行きました。
クマ君はその力を活かして大きな魚をとってきました。
キツネさんは知恵を活かして果物をもってきました。
しかし、うさぎちゃんはがんばってもがんばっても何も取ることができずに老人の所へもどってきたのです。
クマ君とキツネさんはうさぎちゃんのことをとても責めました。
「約束」を守れないのであればもう絶交するとのことです。
うさぎちゃんは老人に火をおこしてくれるようにお願いしました。
魚でも焼いてくれるのかと思い、老人は火をおこしました。
すると、うさぎちゃんはクマ君とキツネさんに自分は約束をちゃんと守るよと言い、また老人に向かって僕のことを食べてお腹を満たしてくださいと言いました。
一同はびっくりしてうさぎちゃんを止めようとしましたが、それより早く、うさぎちゃんは老人のおこした火の中に自らの体を投げ入れたのでした。
クマ君とキツネさんは自分たちを責めました。
また、老人も自らを責めました。
私がいたずら心をださなければお前は死なずにすんだのにと。
老人は、うさぎちゃんの、あまりにも献身的な行動に感動し、また感謝してもとの天の神の姿に戻りました。
そして、真黒になったうさぎちゃんの体をだいて、お詫びにお前を月の守り神にしてやろうと空高くとんで行くのでした。
それからというもの月にはうさぎの姿が見えるようになったということです。」
この話が終わるころ、必ず良寛和尚の目にはたくさんの涙があふれているのでした。
それは、気持ちばかりあって何もすることができない、情けない自分が、このうさぎちゃんと重なって見えるからでした。
そして、村の子供たちも良寛和尚を見てもらい泣きするのでした。
このお話は「お釈迦様」の前世のお話で、ご自分の身を捨てて「布施」の行いを示されたそうです。
「布施」とは見返りを求めずに他者に利益を施すことです。
皆さんはこの話を読まれてどう思われますか?
面白いですか?
意味がわかりませんか?
しょうもないでしょうか?
私は泣いてしまいます。
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